第24回多賀工業会東京支部総会講演会報告

講師を紹介しているところの写真  今年の講演会は、日産自動車から日本ゼネラルモーターズを経て、現在RJC会員であり自動車ジャーナリストとして 活躍中の持田幸武氏(39学機)による「自動車のいろいろな話」と題し、長年在籍した自動車業界にまつわる多くの話題の中で、 特に会員にとって興味深いものをセレクトしてご紹介いただきました。
 以下にお話いただいたものの中から一部抜粋してご紹介いたします。

文責:39学機 小林 章夫

自動車に関連するいろいろな数値
  • 重量と価格:品物の価格を単位重さで比較すると面白い。自動車は1,000kgで100万円、 1,000円/kgであり、パソコンの50,000円/kgやステーキの3,000円/kgより安く、ほぼお米と同じ。
  • 馬力:世界共通ではない。米国の1,000US馬力=日本の1,014JIS馬力で米国の馬力の方が強い。
  • 円周率の数値:全世界共通ではなく、ドイツではπ=3.0で計算する 。 講師のクローズアップの写真
    従って2.0リットルエンジンは1.9リットルになってしまい、エンジン排気量の数字が95%になる。
  • 5段階評価の数値:日本の1〜5に対し米国は0〜4で、最高点も平均値も米国は1点低く、 同じ感覚で扱うと、とんでもないミスを犯すことがある。
  • 人体の寸法:衝突実験を初めとした自動車の開発に使われる人体の寸法は、 人体寸法の細かい数値が公表されているアメリカ人の寸法が使われ自動車の安全研究を初めとした 自動車開発が行われている。
  • 自動車の安全装備の使用頻度:アメリカで1人の人に換算すると、急ブレーキ(ABS)1回/1日、 車の修理を伴う事故1回/5年、エアーバックが開くような事故1回/200年と言われている。 アメリカでのエアーバックのセンサーは事故の時の運転状態(走行速度、エンジン回転数、 ブレーキ、シートベルト、衝撃の大きさ方向etc)が全て記録されている。
  • 車の大きさ:世界最小は4.8mm(電気で走る。勿論人は乗れない。1990年デンソーが製作)  世界最大は、長さ15m強、高さ7m強、タイヤだけで4m弱、重さ5ton以上ある。 コマツ製の鉱山用トラック。最高時速64.5km/h、最大積載量300tonとジャンボ車。

★ 変わった法規
自動車に関する色々変わった法規を紹介。
  • DRL(デイタイム・ランニング・ライト)=昼間ヘッドランプを点灯する。
     1970年に北欧4カ国で法規制。カナダでも自国法として採用。日本では長野オリンピックの時に 米国五輪選手団の車に倣い、地元バス会社が昼間点灯走行を実施。 事故の減少効果に注目し、徐々に広まりつつある。
  • ヘッドランプウォッシャー公演中の講師の写真(1)
     羽虫によるヘッドランプへの悪影響があり、法規でヘッドランプへのワイパー装着を義務化している。 高速走行の多い欧州では羽虫がフロントウインドーやヘッドランプに付き視界が悪くなったり、 放電型のヘッドランプに羽虫が付くと光が散乱するので他車への悪影響を避けるため、 ヘッドランプウォッシャー装着が義務付けられている。
  • 2.5(5)マイルバンパー
     低速(2.5(5)マイル)で衝突しても走行装置に異常が無いことという安全法規。 日本での理解は難しい。欧米では縦列駐車の車が前後の車をバンパーで押して余地を作り発進する。 この事により走行に支障を来たすことがあってはならないとした法規。

★ 車に使われている波 公演中の講師の写真(2)

車には色々な波が使われている。代表的な波の使われ方を紹介。
  • 電磁波:波長の長い順に使われて来た。
     自動車ラジオ(AMラジオ⇒短波ラジオ⇒FMラジオ)
     自動車電話(携帯電話)・GPS・VICSシステム・ETC・ACC
  • 光:可視光線から目に見えない光の活用へ。
    公演中の講師の写真(2)  ナイトビジョン(人や動物、走っている自動車から出る遠赤外線(8〜14μ) を画像化してヘッドランプでは見えない範囲の危険を避けるための安全装置。)
     850nm近赤外線を活用した雨滴検知ワイパーとVICSインフラレドビーコン
     LED:テールランプ・交通信号機などに使用、耐久性が高い、発熱しない、点灯が早い、 消費電力が少ないなどの特徴があり、将来ヘッドランプへの採用など期待される。
  • 音波:超音波(42KHz)を使って障害物を検知する 安全装置が実用化されている。
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★ 産油国にまつわる話
石油の主要産油国と言えば中東諸国であり、これらの国にまつわる話を紹介。
  • サウジアラビアの服(トーブthobe):気温が高過ぎて扇風機は熱風でむしろ暑い。 トーブは首から足元まで1枚で作られ首周りできっちり閉めることにより気温の高い外気を シャットアウトしている。男性用小便トイレは使えず女性用と同じ、普段下着は着用していない?
  • 中東でも雪が降る:夏の最高気温は60℃以上になるのは一般に良く知られているが、 冬になれば雪も降れば氷も張る所がある。イランにはスキー場があり、クエートにはアイススケート場がある。
  • サウジアラビアは小麦の輸出国:砂漠で小麦が育つ?との疑問。実は地下水は豊富で最近はこれを汲み上げて小麦栽培を行い、 実に輸出までしている。
  • 砂嵐:砂漠だから風が吹けば砂嵐が発生する。10m先も見えない道路でのドライブは本当に怖い。
  • ラマダン(イスラム暦で9月は断食月):太陽が出ている日中は、食べ物、水、タバコ全て口に出来ない。 夕方太陽が地平線に沈むと歓声を上げて喜ぶ。病人、子供、旅人等は人の見てない所で食べても良い。

★ 人口ピラミット
 商品計画を立てる時に人口ピラミットが使われる。マーケットポテンシャルがどれだけあるか、どんな商品をどれだけ投入できるか判断材料にする。
  • 日本人口ピラミット:1930年の総人口は6400万人で綺麗なピラミット形。 0歳児男女各95万人に対し20歳の成人式を迎えられるのは6割にすぎなかった。 2000年は総人口1億2400万人であるが子供の人口が少ない。 完成車のマーケットとして日本市場のプライオリティを下げたメーカーもある。 2030年の予想(人口問題研究所)では、総人口1億1800万人で新生児は男女とも40万人に減少し、 高年齢層が増える。福祉車両や高齢者向け自動車が求められる。
  • 2000年サウジアラビア人口ピラミット:総人口1800万人、20歳の成人に達するのは半分。 さらに女性のドライバーは認められていないので、自動車のマーケットとしては期待が小さい。
  • 2000年米国人口ピラミット:総人口2億6300万人で先進国の中で数少ない人口増加国 (移住者の多いことも起因している)。マーケットとしては安定的に期待できる。
  • 2000年中国人口ピラミット:総人口は12億6700万人であり、マーケットとしては非常に大きいが、 将来的には一人っ子政策の影響で子供の数が少ないので頭打ち。

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