平成21年度多賀工業会東京支部講演会 概要報告

光ファイバ通信の現状と今後の動向
〜その歴史的発展と今後の課題〜

報告者 石川 久(44学子)

講演者:堀口正治(44学子、46院子)
茨城工業高等専門学校 電子情報工学科および電気電子システム工学科 非常勤講師
工学博士
趣味 旅行、写真、ゴルフ、将棋

1. はじめに

 講師はNTT光通信研究所で、約30年間にわたり光ファイバの研究に没頭され、現用の光通信技術である長波長帯における光ファイバの開発に貢献されました。 氏の研究論文は国内外合わせて100編以上におよび世界中の光ファイバ技術者の論文に多数引用されています。講師はかなり遠慮がちに話していましたが、オックスフォード出版の光ファイバの歴史書(City of Light)にも、氏の業績が顔写真入りで十数ページにわたって紹介されています。第29回多賀工業会の東京支部の講演会として、彼の講演は格調高くかつ聴衆をひきつけるものがあったと思っています。

講演風景の写真
図1 講演風景

2. 講演の概要

2.1 光通信技術のターニングポイント
 ルビーレーザの発明にはじまり、光ファイバ伝送の低損失化に関する研究(例えば、不純物除去を追及する研究、長波長帯低損失光ファイバの開拓など)、CVD法やMCVD法による光ファイバ母材製造技術の開発、室温連続発信の半導体レーザの開発など、今日までの光ファイバ通信の発展が紹介されました。

光ファイバ伝送技術低減の歴史年表
図2 光ファイバ伝送技術低減の歴史年表(20年に渡る熾烈なる低損失化競争)

2.2 光ファイバ伝送における長波長帯の開拓
 講師がNTTに在職中に研究参画した「光ファイバケーブル技術」に関する共同研究遂行の中で、講師等は、光ファイバに最終的に残された吸収損失要因であった水分(OH其)の汚染原因を突き止め、徹底的にそれらを除去したファイバを研究開発するとともに、光ファイバの伝送損失を極めて広範囲な波長領域(波長0.4〜2.5μm)で精密に計測できる光損失自動測定技術を開発しました。
 その結果、講師等は石英系光ファイバに固有の極低損失波長帯が「長波長帯」(波長1.1〜1.7μm)に存在することを解明し、同波長帯を利用する光ファイバ通信技術を世界に向けて発信しました。これらの発見は、0.8μm帯(短波長帯)が光ファイバ通信に最適の波長帯であるという従来の概念を大きく変えることとなり、国内外に対して長波長帯用光源の開発をはじめ、光伝送方式の研究に多大の刺激を与えその後の光通信技術の中核技術となました。現在世界中で実用化が進められている光ファイバ通信技術にこの「長波長帯」が使われていることが紹介されました。
2.3 趣味を楽しむ
 研究の合間に、写真撮影に興味を持ち、退職後世界遺産数ヶ所への旅行と写真撮影を夫婦で楽しんでおられる写真の紹介がありました。
2.4 最近の技術動向と今後の課題
 FTTH (Fiber To The Home)、フォトニックネットワーク、通信と放送法の改正(2011年)、NGN (Next Generation Network) 構想、公衆通信とインターネットの融合、光通信と無線の関係、デジタルデバイド、ユビキタス社会など、光ファイバ通信とインターネットにかかわるトピックスについて、素人にも分かりやすく説明いただきました。 そして、特に50歳以上になるとインターネット利用率が低くなる事をデータで示され、愕然としました。

年齢別インターネット利用状況のグラフ
図3 年齢別インターネット利用状況

2.5 むすび
  光ファイバ通信の発展に伴い、ブロードバンド通信が低価格で手に入る時代になりました。われら世代は現役引退後の「"黄金の30年"をどう過ごすべきか?」、「これからの趣味と生きがいとは何か?」、「脳内活性化の手法は?」、「インターネット活用法は?」などについて講師の日頃の悩みと実践法を聞かせていただきました。

インターネット利用で、今後の人生を2倍楽しくする: 老化防止対策

1.最高性能のPCを、臆せず使いこなそう。
  =>身近なお孫さんには、高性能PCをプレゼント。
2.WEBの利用は「高度な社会参画」であり、老化防止対策
3.なんでも興味を持ち徹底的に、「ミーハー」になろう。
4.情報収集の達人になろう。
  =>趣味の上達は、3〜3倍速くなる
     ・買い物は、人より2〜3割安くゲット
5.とにかく、インターネットは有用な情報宝庫である。
     ・ただし、PCのセキュリティ対策を万全に

図4 講師からの提言

3. 質疑応答

 身近なる提言が講演後半に講師からなされたので、通信会社の競争について、とか、高性能PCについてとか質問が出されました。出席者の皆様は聞きたい質問が沢山あったようですが、十分に質疑応答の時間がとれず申し訳なかったと反省しています。

玉川先輩(28学電)からの質疑応答風景の写真
図5 質疑応答風景

以上

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