平成22年度多賀工業会東京支部講演会 概要報告

「オーロラの魅力」

報告者 松田 秀雄(昭49院子)

講師:五十嵐 喜良(昭47学子)氏
社団法人 電波産業会 研究開発本部 次長、 開発センター長
学位:博士(情報学)
趣味:卓球、写真

概要

 講師が郵政省電波研究所(現在の独立行政法人情報通信研究機構)で研究活動された電波による電離圏層観測、南極越冬隊員として取り組まれたオーロラ観測およびアラスカ大学等と共同で実施された北極圏の超高層大気観測等について紹介されました。御本人が観測されたオーロラ以外にも、1950年代後半の映像から最新の観測装置による映像まで含めての紹介で非常に興味深い講演となりました。

演題の写真
図1 演題「オーロラの魅力」

講演中の講師の写真
図2 講演中の講師

1. はじめに

 まず南極について説明されました。日本の37倍の面積で95%以上が氷に覆われている。最大氷厚は4,800m、観測最低気温は零下89.2℃である。岩石や化石に長い歴史があり、鉱物・生   物資源に富む自然科学上貴重な場でもある。
 1770年代にイギリスのジェームズ・クックが初めて南極圏到達以来、1821年にアメリカのジョン・デービスが南極大陸に初上陸、1911年にノルウェイのルーアル・アムンゼンが南極点に到達した。
 日本では1912年(明治45年)1月28日に、白瀬矗(しらせのぶ)中尉が犬ぞりで、最南点の南緯80度5分、西経156度37分の地点に到達し、その地点周辺を大和雪原(やまとゆきはら)と命名した。その後1956年11月に第一次南極観測隊が出発以来現在に到っている。この間、観測輸送船も「宗谷」、「ふじ」、「しらせ」、「新しらせ」と進化してきた。
 南極には、宙空圏、気水圏、地圏、生物圏等、広範な観測事象がある。講師は、通信に関係することから、大気圏、主に電離圏層の観測をされてきた。

大気圏の構造等の図面
図3 大気圏の構造等

 オーロラは上空100kmから500kmの熱圏と呼ばれる領域で発生する。この領域は地球の大気が太陽からの極端紫外線(EUV)を受けて電離している場所(電離圏)でもある。オーロラはこの領域にある酸素原子や窒素分子が光る現象である。オーロラがカーテンのように見えるのは、オーロラ粒子(高速の電子や陽子)が磁力線に沿って動き少しずつエネルギーを失い大気を光らせるためである。

2. 最初の南極観測:1978年(オーロラとの出会い)

講師自身の観測映像の前に、第3次隊が記録した映像を放映していただいた。その中にはタローとジローの姿も捉えられていた。さらに、第4次、8次、12次越冬隊の映像も紹介された。

第3次隊記録映画中の4画面
図4 第3次隊記録映画

 講師が参画された第19次越冬隊ではロケットによりオーロラが観測されその映像も紹介された。さらに、夏季オペレーションで、30mの高さの電離圏層観測用デルタアンテナを建設のコマ落し映像が紹介された。し講師が開発されたオーロラレーダ装置による電波によるオーロラ観測は電離圏定常観測の一環として継続された。その後2001年には112MHzの新型オーロラレーダも開発され、その観測結果も紹介された。

オーロラレーダによるオーロラの高精度観測の画面

3. 2回目の南極観測:1982年(南極オゾンホールとの出会い)

 人工衛星観測によるオゾンホールの最大面積は昭和基地におけるオゾン全量最低値と相対関係にある。オゾンホールの最大面積が広いとオゾン全量最低値は低い。第23次越冬隊として参画された時、1982年に昭和基地でオゾン全量の急激な減少が観測され、1984年に報告された。その後、イギリスのハリー基地の観測値からも同様な報告がなされ、この現象がオゾンホールがと呼ばれ地球規模の環境変化としてクローズアップされた。

オゾンホールの発見につながるオゾン全量の通年観測(第23次越冬隊)1982年の説明図と写真
図6 オゾン全量の観測

4. アラスカでのオーロラ観測

 日米共同研究「アラスカ大学地球物理研究所との中層大気国際共同研究」でアラスカに出張、研究・観測された。日本側の担当は、「中層大気観測」で、大型中波レーダシステムをポーカーフラットに設置し、中波レーダ観測ネットワークを構築された。この共同研究活動は地元紙のトップページにも掲載・紹介された。

地元紙による日米共同研究の紹介の画面
図7 地元紙による日米共同研究の紹介

 本活動についての紹介の他、アラスカでのオーロラ観察についても紹介いただいた。

5. むすび

 最後に、最新の観測装置で撮影された2009年のオーロラについて紹介していただき、南極・北極ツアーやアラスカ・カナダ・北欧へのオーロラ鑑賞ツアーについて紹介していただいた。

オーロラ観光ツアーのチラシ画面
図8 オーロラ観光ツアー

 講師ご自身の研究観測活動の成果に加え、第3次隊の記録映画によるオーロラの紹介から最新の観測装置で撮影されたオーロラまで映像をふんだんにおりこみ紹介していただき、最後にオーロラ鑑賞ツアーをご紹介いただいた。
 ハイレベルながら、有意義で興味深い講演だったと思います。

−以上−

−このページのトップへ− −本文へ戻る− −報告目次へ−